塩野七生『男たちへ』

素敵な男であることについて塩野さんのレッスン。とはいってもレッスンというほど上から目線ではない。結構好き勝手に書いてはいるが、好みは好みということがよく分かる。少し古くさく見えることもあるものの、基本的には深く通じる所があると思う。それというのは、歴史の男たちを研究してきた著者ならではの、男へ向ける目の深みがあるからだと思う。

何度か出てくる「―かしらん」という語尾は、なかなか素敵だと思うんだけど、最近気になっている植草甚一も多用していて、これは時代的なものなのだろうか。女性語っぽいのを承知で植草さんが使っているのかも気になる。

あとはイタリア在住の塩野さん。ヨーロッパ観がすごくいい。崇めるでも無く、けなすでもなく。日本の良い所は日本の良い所として、比較しているのが、よく分かる。

この人の文章って、何故か声に出して読みたくなる所があって、なかなか素敵だと思う。一見固そうだが、そうではなくて、おだやかなユーモアが文章の全体を包んでいる感じがするのである。

妙に背伸びして文藝春秋を図書館で読んでいた高校時代。すっと頭に入ってきたのはこの人のエッセイくらいだったなぁ、そういえば。