吉本隆明、糸井重里『悪人正機』

悪人正機 (新潮文庫)

悪人正機 (新潮文庫)

吉本が喋り手で、糸井が聞き手。各章の最初に糸井の解説がある。解説は出来れば章の終わりにつけてほしかったなあ。そもそもそんなに長い文章じゃないのに、最初から解説されると面白さが損なわれる気がする。

「生きる」とか「言葉」「旅」「ネット社会」など様々な大テーマがあって、吉本隆明がそれを具体的というか非常に身近に、「自分事」として語ってくれる。
「ふつう」はそう言わないよね、という様な事が結構あって、そういう考え方もアリだなと思う事しきり。

p19あたりから語られている「本当に困ったんだったら、泥棒して食ったっていいんだぜ」という言葉。
これとほぼ同じ様な事をスリップノットのコリィがインタビューで言っていたのを思い出した。正確では無いかもしれないが、「生きるために食い物を取ったならば、それは窃盗ではなくてサバイバルだ」文脈は思い出せないが、かなり印象の強い言葉で、長い事頭に残っていた。
ちょうど読んだのが山谷から帰ってくるバスの中だったので、なおさら考えさせられた。本当に困っていて、泥棒とは言えるか微妙だが、モノを拾ってきて、それを売って金にしている人たちがいたのだから。

なんだかこの人の使う「ーなんだぜ」に妙な気恥ずかしさを覚える。イトイさんもたまに使うけど、なんで恥ずかしいと思うんだろう。

ギャルソンに触れてたり、遠藤ミチロウに触れていたり。魂が若そうな吉本さん、趣味も若いと驚いてしまう。スターリンのライブに通っていた時期があるなんて驚いた。想像するとすごく面白い。当時60歳くらいかな。

語られる事の幅が広くて、一度にコメントしきれないんだけど、たぶんこれから何度か読みなおすと思う。