中島義道『戦う哲学者のウィーン愛憎』

戦う哲学者のウィーン愛憎 (角川文庫)

戦う哲学者のウィーン愛憎 (角川文庫)

著者が33歳からウィーンに滞在した時の事をたっぷりと描く。一般書としてはデビュー作らしいが、確かにアクの強さが他の本よりは少ない。しかし実際本人にあってみたら、たぶんこのくらいなのだろうな。

価値観の違いを当然のものと見なしながらも、描かれるウィーンの人たちの行動には本当に理解しがたいものもある。そして著者が日本に戻ってきてからとるスタンス(スピーカー騒音に対する苦情とか)は、ウィーンで学んできた事が強く影響していることも分かる。となると、彼のスタンスの一部が私にとって理解し難い所もあるのは当然なのかもしれない。
高慢ちきで頑固で偏見はたっぷり。そんなヨーロッパの描き方。「ヨーロッパ」というのでは言い過ぎな気もするが、少なくともウィーンという範囲内では事実らしく見える。事実らしい、というのは微妙な言い方であるけれど、多分自分が行っても似た様に感じるだろうなという気持ちである。