伊集院光『のはなし』
- 作者: 伊集院光
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2007/09/28
- メディア: 単行本
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確かに面白いのだが、この人のラジオのファンとしてはやはり喋りの人だと思わざるを得なかった。文字だと伊集院特有のダイナミクスがいまいち感じられないのだ。
ただ、ラジオじゃあ間違いなくしないであろう少し暗い話や文字じゃないと分かりにくい話は文章で読む価値があると思う。ラジオを全部聞いた訳じゃないが、いままで聞いたことの無い話も結構あった。
学生の頃の話が多いのだが、その中にも時代が違うから知識として面白いものと感情移入して読めるものとがある。
プールの話題。小学校の時、プールの自由時間は確かにすごくうれしいものだった記憶がある。伊集院は自由を勝ち取った時のことを書いていて喜びが甦ってきたと書く。たかだか十分の自由。小学生というのはそこまで囚われの身ではない。しかし、うれしかったことに変わりはない。不自由の中の自由を知っていたのかもしれないし、足るを知っていたのかも。それに比べると今の俺はなかなかの強欲なのだろうか。
あとNHK遅刻事件は何度聞いても読んでもハラハラする。家で起きた瞬間、自分が生放送で出演・司会をするはずの番組がテレビで始まっている、なんて想像したくない。
とまあこんな感じで想像力やら感傷やらをひっぱりだしてくれる伊集院節は健在なので、やはり面白い文章なのだろう。