原研哉『RE DESIGN 日常の二十一世紀』

日常的なモノのデザインのやり直し、リ•デザイン展に出品されたモノの解説とデザイナーの制作意図などを語る。
例えば「トイレットペーパー」や「年賀はがき」などというテーマをあるデザイナーに与えて、その回答というカタチでのデザイン。テーマとそのデザイナーの組み合わせでは、ベタなものもあれば、意外な組み合わせもあったりして楽しい。企画者の原自身もデザイナーであるから、そこには躊躇を乗り越える苦労があったという。


写真は転載できないけれども、面白かったものを紹介してみる。


建築家、板茂が回答した「トイレットペーパー」

真ん中の芯が四角くて、ペーパーの形自体もゆるく四角にする。敷き詰められる様になることで、輸送にムダが出なくなるし、紙がムダに出過ぎない。
他のテーマでも挙げられていたテイッシュもそうだけど、そもそも使いたくなるようなデザインなのだ。子どもの行動を想像すれば分かるだろうし、子どもでなくともそうだ。
作る側としてはいっぱい使ってもらった方が良いのかもしれないが、出来ればそういう所で金を稼がないでほしい。ローコストにする努力をしろよ。そういう意味でもすごく良い。
 最近、よく見る芯の無いトイレットペーパーもなかなか良い。芯が無くても安定してる。


アートディレクター、大貫卓也が回答した「タバコのパッケージ」

自分がこのテーマを見た時パっと思い浮かんだのが携帯灰皿とパッケージを一緒にすることだったけど、良いカタチは浮かばなかった。パッケージの半分を灰皿にすれば良いと思ったんだけど。
大貫の回答も発想は一緒だったけど、かなりいい。従来のパッケージから横へ二倍に延長して薄い携帯灰皿を付ける、販売時は折り畳んでおける。本の表紙だけがはずせるようになっている感じ。表紙の上半分は切り取り線が入っていて、吸い殻を入れたあとに折り畳める。コストはかかりそうだけど、タスポとかタバコ自体の値段をあげるとかよりよっぽど良い。喫煙者のためにも、非喫煙者のためにもなるはず。


制作意図の所に合った「灰皿の所在を確認してからタバコを吸えば良いということなんでしょうが、現実はタバコを吸ったあとに灰皿を探すというのが、屋外での愛煙家の自然な順序なんです、たぶん」というのはホントにそうなんだろうな。携帯灰皿はタバコを嫌っている自分ですら持ちたいと思う程のデザインが安価でたくさんあるのに、実際持っている人をほとんど見たことが無い。自分の周りの大学生がアホなの?多分違う。そんなに普及してない気がする。


自分が通う大学では、分煙から禁煙へ、喫煙室を無くして校内全面禁煙にした。そうしたら、校門のすぐ側(喫煙者的には大学の外)に喫煙者とそのゴミをまき散らすという最悪な結果になった。どちらも頭悪すぎるが、大学側の方がアタマ足りない。喫煙室を無くした理由に「全面禁煙」という言葉を使いたかった以上の意味が思い浮かばない。結果、「全面禁煙」という言葉で上げたかった評判以上にマイナス効果だ。
学校に入る時にタバコの匂いがあって最悪の気分になるし、バカがいっぱい溜まっていて見栄えはもちろん悪い。すぐそばには住宅がたくさんある、近隣住民はどう見ているだろうか。携帯灰皿だけで解決する問題では無いが、せめてゴミだけでもと思う。ゴミなんだよ、それは。


完全にタバコが習慣と化している喫煙者にいまさら倫理観とか健康で訴えても効果が薄いと思う。「タバコってカッコいい」で初めた人が99%だと思うので、パッケージをカッコ悪くすることに意味はあるかもしれないが。


その習慣に対して、金額で訴えるというのはなかなか効果的だが、今回のリ•デザインされたパッケージの様に行動へ訴えかけた方が効果的だ。無意識の行動に訴えれば、ヘタな教養や知識よりも広い効果を持つ。ソレはタバコそれ自体が孕む問題でもある。


「目には目を」を大抵の場合賢い方法だとは思わないが、「習慣には習慣を」で改善してみるのには未来がありそう。