五木寛之『青年は荒野をめざす』

新装版 青年は荒野をめざす (文春文庫)

新装版 青年は荒野をめざす (文春文庫)

トランペットを片手に西を行く青年の話。
その放浪にはジャズがあって、恋愛があって、仕事があって、色々な価値観がある。

ドラマチックでキザな位がちょうど良い。
とてもはまっている。

短い時間で読めたのは、あまり長くないという以上に文章がスイングしているからだろう。
この本ふうに言えば、高速のシンバルレガートが続く、といった所か。
そして鋭いキメが何度も入るなら、ワクワクしないハズがない。

ジャズの話ではあるが、主人公ジュンが楽器を吹く場面はところどころのキメにあるだけで、熱心に楽器練習をするお話ではない。

技術は、音楽の最も重要な部分だということを、ぼくは今でも信じています。低いテクニックから、美しい音楽は生まれないと考えています。だが、それだけでは、音楽にならないんだ、と考えるようになりました。(p246)

「音楽の技術」の定義にも、「美しい」の定義にもよるが、「テクニックが無ければ、美しい音楽は生まれない」には同意しきれない。
これが書かれたのは67年だけど、そんな常識を破壊してきたから今の音楽があるのだ。
ただし、例えばトランペットのようにアナログな楽器においては大体当てはまるだろう。ドラムも同じだ。


逆に、「テクニックだけでは美しい音楽は生まれない」というのは今でも揺るがないと思う。

テクニックだけで音楽は出来ない。

当たり前か?

いや、それが当たり前であろうと、自分にとっては常に心がけないといけない事なのだ。