手塚治虫『アドルフに告ぐ』

アドルフに告ぐ(1) (手塚治虫漫画全集)

アドルフに告ぐ(1) (手塚治虫漫画全集)

あのヒトラーを含む三人のアドルフの話。点と点とが繋がり、線になり、そして大きなうねりとなる。
第二次大戦、ヒトラーが大きく絡む壮大な歴史的物語がある一方、物語が進むに連れて人物関係は狭く複雑な人間関係も描かれる。
戦争のむなしさやユダヤ人など人種差別の問題というメッセージと人間関係とが分離することなく語られる。本当に驚くしかない。そして、驚いたあとは考えるのだ。

三年ぶりくらいに読んだのだが、ボロボロ泣いた。そして泣いた、のだが何の涙なのかいまいち分からないところがある。
圧倒的なモノを目にした時の感動と悲劇的な意味での感動が混ざり、それに加えて自分の場合に引きつけて考えた時のことはいまいち言葉に表せないでいる。

散々ほめておいてなんだが、最後の章の前は少し飛ばされ過ぎとも思う。以前読んだ時にも困惑した覚えがある。しかし、そこら辺の空白は読者に想像の余地として残してもらったと考えることも出来る。だってそれ以前はとても緻密に描いているのだから。

比喩では無く、全人類に読んでほしいと思う。