中島義道『孤独について』

生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春新書)

生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春新書)

自ら孤独である事を選びとる。自分のためだけに時間を使う。
そのような事を著者は人生自分語りから具体的にする。
この自分語りが割合としては多いけど、相当面白い。著者の書いている事に共感出来たり、何かを提示してもらうありがたさはあるんだけど、それ以上に中島義道という人物の面白さに惹かれる。
だからこの人がカントを研究するより自分を研究するほうが面白いと感じ、自分の事を本に書くというのは良い。
自分の事を書く、というのは孤独の楽しみ方でもある。
そう著者の語る「嫌い」の感情と同じ様に、世間一般では隠そうとしたり否定したりごまかしたりしようとしているものをも人生の一部として味わう。それが孤独、というか他人との関係と言えるかな。
しかし同時に完全なる孤独、仙人の様な隠居生活を選んでいる訳では無いのが面白い所。そうであったなら本など出せない。

最初の方で述べられている「運命愛」は俺にも強くある。簡単に言うと過去に起こった事を肯定する態度。自分の運命は自らが選びとったものだと考えてみること。そういう風にして「孤独」を選ぶ。
運命という言い方が大げさななら、具体的な環境(山形に住んでいる)とか立場(就職の決まらない大学四年)に置き換えて考えてみるといい。
自ら選びとるという事はそれを選択する意志の力が自分にあったということ。それは錯覚や無意識では無い(と思い込む)態度。

孤独は満たされるのでは無く、一時的に忘れる事がよくあるだけだ。しかし結局俺は俺で一人しかいないのだから孤独だ。ならばそれを楽しもう。