大槻ケンヂ『オーケンののほほんと熱い国へ行く。』

オーケンののほほんと熱い国へ行く (新潮文庫)

オーケンののほほんと熱い国へ行く (新潮文庫)

オーケンさんがインドとタイに行った時の話をのほほんと描く。いつも通りのゆるいエッセイだけど、何か熱い国の空気に当てられた様なボンヤリとしたダるさがまったり感を加速させる(矛盾したような言い回しだ)インドの物乞い、タイでも金にガメツい人たちの話は何度と無く書かれている。バクシーシの話は仕事とは何かを考えさせられる。障害者は障害を活かして物乞い、美少女は美少女を活かして物乞い、奇形は奇形を活かして物乞い…
自分のセールスポイント、というか個性をそれとして受け止めないと出来ないことだ。「今の私は私じゃない」みたいな自分探し的気持ちの人も物乞いする人たちの中にはいるんだろうか。その状況を仕方ないものとして受け止めるのか、自ら選択した道なのかという事は傍目には解りにくいがとても大きな差であると思う。
このことはオーケンさんが書いている長期旅行者の二つのパターンにも通ずるかも。二つのパターンとは「旅が好き、気がついたら何ヶ月もいちゃったよ、純粋型」「日本に自分の位置を見いだせない、モラトリアム、逃避型」
旅行記に出てくる人物は確かにこの二つのパターンが結構ハッキリはまるけれど、実際どうなのかは分からないな。
別に後者だとしてもオーケンさんの様に自覚しているなら、別にどうも思わない。しかもこの本を読む限り、リゾート気分でバックパッカーしてるだけに見えるからモラトリアムというのとは何か違うと思う。まあ、これも傍目には分かりにくい差だろうけど。