古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』
- 作者: 古屋兎丸,東京グランギニョル「ライチ光クラブ」
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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若さは美。僕達はオトナとは違う。大人は汚い。
原作はアングラ劇らしい。フランケンシュタインの怪物的なロボットであるライチ役は嶋田久作だったとか、納得。
ギャグマンガの様なタイトルだけど、中身は濃密でシリアス。
この頃の絵はかなり好きかも。
人体のミニマムな線。それに対して背景や内臓その他諸々の書き込みの量。
モノクロであるマンガだからなのか、「若さの美」という事の象徴なのか、白と黒の対比がステキだと思う。
黒髪、詰襟、目、睫毛に対しての白い肌。
ゼラは殺害した先生の内臓の黒さを否定する。僕達の中身はもっとキレイだ。あんなモノは入っていない。
そんなことはないんだけど。
そういえば、キレイな女性が横たわっていて、その腹が開かれていて、ドス黒い内臓が見えているという絵画があった気がするんだけど、名前を忘れた。
クラブで一番キレイな少年のジャイボは生えかけてきたヒゲを嫌悪する。生えかけのヒゲは白とも黒とも言いきれず、真っ白の肌を侵食するものでしかない。
ジャイボが自分より美しい少女カノンに抱いた感情は、憧れというより恐れだろうか。
少年達はカノンを崇める様に監禁する。
ロボット「ライチ」の燃料は名前のままライチなんだけど、ライチも黒い皮を剥くと白い中身が出てくるものだ。ライチを食べたり、食べさせる描写がいちいち凝って書いてあるのがニクい、エロい。
LIGHT(光)とライチって音が似てる。
話の中で裏切りがキーワードとなっていて、クラブを仕切っているゼラ(常川くん)は常にその影に怯える。オチは結構見えていた様な気がしていたんだけど、読者である自分も裏切られた。もう一度読み直したら、うまく書いてある事がよく分かった。
ステレオタイプ的なヒーローキャラが立ち上がった時、「敵」を倒してチャンチャンとは終わらないな、という予感は多くの人が感じられるんじゃないだろうか。うまく説明出来ないが、なんだか、そういうマンガなのである。