ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』I,II

サブタイトルはノーベル賞物理学者の自伝、であるが別に物理の難しいことにはあまり触れていない。それは多分、具体的に語らない事こそ、ファインマンさんの最も嫌悪する所であるからだ。
全体的には小学生でも読める平易な文で痛快な自伝が語られている。ネット上でもすごくオススメされていたけど、確かにすっごく面白かった。


いたずら好きで、正直で、女の子が好き。お茶目な人だ。
打楽器奏者、カギ開け師、画家…物理学者。

誰にでも話をふっかけて、正直な気持ちを出す。自分もすごく共感できるが、ここまで極端ではない。もう少し度胸と愛嬌があれば出来そうな事だから、マネしてみようと思う。
ただ、「女の子のどれにもこれにも嫌われたのは、僕が礼儀正しく自然にふるまううえ、質問にまでちゃんとばか正直に答えたからだ。」ともある。好奇心があれば、ある程度演じる能力が必要とされる場面にも対応出来るんだろうな。自分の気持ちに嘘をついていなければ良いのかもしれない。

うまく話をふっかけるというのはすごく大事な能力だと思う。相手が言うつもりでなかった位のことを引き出したり、うまく自分を知ってもらえればトクだ。言いたいことを引き出してもらえる話相手というのは、すごく気持ちがいい。自分もそれができるようになりたい。もちろん引き出してもらう、というのは言わされるという意味ではない。

分かりやすく物を語る能力はこの本自体にもすごく活かされていて、すごく気持ちがいい文章だ。



あとこの人には実学じゃないものなんてあり得ない、のだな。何度も「実際」の事柄と数学や科学を結び付けられないでいる事に対する批判というか疑問の様なものが書いてあった。例えば、ほんとうの「具体」例がない算数の教科書に疑問を持つ。
「事実」が何なのかなんて分からないけど、例えば電子などという仮定がたまたま物事を説明するのにピッタリだったというだけだろう。そもそも実学かそうじゃないかなんて、考えていないのかもしれない。科学に対する距離感というものが、非常に明確で、この人が活躍しないハズがないと思う。

そういえば幻覚を見るためになんとかタンクに入るとかいう下りが大槻ケンヂのエッセイにあった話とすごく似ていて笑った。理由は違えど、幻覚を見たいが麻薬を使うのはイヤだ、というのも一緒。



他にも言いたいことや聞きたいことは多い。何度も読み直したくなる本だと思った。


まとめると、

先立つものは好奇心。これに尽きる。