鬼頭莫宏『殻都市の夢』

殻都市の夢 (F×comics)

ある都市を舞台にした一話完結のエピソードをいくつか。一冊で終わりだけど、ちょうどいいボリュームだと思う。

他の作品よりは救いがあるけど、相変わらず暗い。
ズンと突き落とされるような暗さっていうのは、なんだか感情として分かりやすいんだけど、この人のマンガはちょっと違う。
気が付いたら階段を下っている様な、ぼんやりどろーんと気分が沈むような。

この人はなんか少女というものに恨みでも持っているのだろうか？
素直じゃない男というのもよく登場する気がする。妙に気になる二つのモチーフ。

短い話で物足りない感を出さないのって難しいと思うけど、そこらへんはうまい。いい感じの読後。ある程度作品世界に浸りつつも、あれこれ思考できるような。
あとがきでバラしているように、設定が詰まっているようでそうじゃないというのがキモかも。ガチガチの設定があって、かつそれが作品内で説明されないままに展開されるマンガは読んでてキツい。マンガに限らないか。
深みを持たせるための設定となるか読者を混乱させるだけになるか。
読者としては、深読みしたくなるような作品を望む。